
高額なものを購入すると、もちろん傷つけたくありませんし大切に扱うのが当たり前です。特に日本人に多いのかもしれませんが、携帯電話やノートパソコンを見ると、購入当初の保護シールを剥がさないまま使い続けている人を見ます。
もちろん、ものを大切に使う精神はとてもいい事なのですが、これが場合により逆効果になることがあるのです。自身の周りの人を見ると、やはりロレックスを最初に持つ方が多いのですが、新品購入の際に貼られているホログラムのシールを貼りっぱなしにしている人、またはホログラムシールの上からセロハンテープで剥がれないよう2重になっている場合があります。
カバーの上にカバーをする。車を新車で購入した時のシートカバーのようですが、カバーの上にカバーという文化は、世界でもおそらく日本が特に多いと思われます。
時計はムーブメントを覆っているケース部分に金属を使う場合がほとんどです。安価な時計でプラスチックや樹脂など使っているモデルも存在します。
よく使われるケース素材はステンレスなのですが、ステンレスは腐食しにくい素材と言われています。
しかし、あくまでも腐食しないわけではなく、条件が整えば腐食します。
上記の場合のようにシールを貼ったまま時計を着用していると、隙間ステンレスとシールの間に汗や汚れが溜まっていきます。そのまま何年も使用していると、いつの間にかステンレスが錆びてしまっている事があります。
ステンレスは空気に触れることにより、錆びにくいという本来の良さを発揮できるのですが、空気に触れられない状況の場合、汗や汚れなどで悪い条件が整い錆びてしまいます。
これを防ぐには、どんなに嫌でもシールは剥いでおかなければなりません。時計を大切にしたいのであれば、購入後すぐにシールは剥ぐべきなのです。
当店では店頭販売の場合、お客様の目の前でシールを外すか、お客様自身にその場で剥いでいただきます。どうせ時計を腕に巻いて使っているだけで、何かしらものに触れ時計本体には多かれ少なかれ傷が入ってしまいます。
使用するにあたり入ってしまう小傷は、いわば自分だけの傷なので同じものはなく、まるで指紋のように個人差が出てきます。時計の最大の敵である「錆び」に比べると、小傷は磨くことで目立たなくもできます。
時計の保護シールは、時計のためにもオーナーにためにもなるので、必ず着用する前に全て外してください。
バイヤー:合田圭四郎

正美堂時計店 ウォッチバイヤー兼時計修理三級技能士 合田圭四郎
主な専門分野
腕時計や懐中時計の仕入れ、販売、オリジナルウォッチのデザインや組み立て。スイスで開催されていた世界の見本市バーゼルワールドや香港ウォッチフェアーなど国内外の展示会への参加。秋葉原にて毎年懐中時計の展示会を開催
時計知識を深めお客様に時計の魅力をお伝えするため、2009年より毎週日曜日YouTubeにて時計に関する勉強会動画を配信。
背景
1979年、高知県高知市の老舗呉服屋の四男として誕生。時計好きが高じて2006年より正美堂時計店に入社。フライトジャケットやジーンズなどアメカジ、バイクをこよなく愛する。あらゆるお客様の環境を理解するため、腕時計は常に左右両方に着用。2019年、正美堂時計店創業50周年の節目の年に正美堂オリジナルウォッチを開発。
●正美堂時計店●
✔︎毎週、時計についての勉強会動画も配信中!
✔︎ラジオ配信始めました!
大変参考になりました。
ガラス風防に保護フィルムを貼ろうかと調べていたところ、こちらへたどり着きました。
最近はスマートフォンの保護フィルムのように、風防用の保護シートも出てきているようです。そちらについてはどのようにお考えになりますでしょうか。
傷も個性との見解、とても心強く思いました。大切に使い込まれた時計の輝きはとても素敵なものです。
そうありたいと思います、しかしながら、
ウエスタンシャツの袖ボタンや、カフスボタンなどが時計と接触する時、私はどうも気になってしまいます。気にせず使うのが良いのでしょうか。
また、もし保護フィルムを貼るにしても、こちらの記事からしますと、ベゼル(私のはダイバー用の回転式ですが)には貼らない方がよろしいのでしょうか。
ご見解を宜しくお願いします。
Jay様
コメントありがとうございます。
風防や裏蓋の保護シールですが、シールという特性から表面は保護されますが、裏面は粘着力のおかげでゴミなど付着する原因となります。また、湿気が強い場合はくもりなど水分が発生します。時計の大敵湿気などの水分とホコリで、シールを剥がさず使用するということは、二つの悪い条件を抱えてしまいやすくなります。
保護シールを貼ることは、他のものと干渉する際に時計をダメージから守る役割となりますが、そのままですと結果的に時計にはよろしくない現象を引き起こす可能性が高くなります。もしシールを貼るのであれば、定期的な取替をおすすめします。
カフスや袖ボタン、たまに時計とブレスレットなど二重で装着する方がいらっしゃいますが、できる限り鑑賞しにくい配置にすることで、少しでも回避が可能かと思われます。オーナーの工夫次第で影響する部分ですので、ぜひいろいろ考えてみることをおすすめします。
何かいい考えがまとまりましたら、本ブログでも紹介させていただきます。
ありがとうございます。