時計の文字盤に使われる数字は、大きく分けて3種類存在します。日本人に最も見慣れた、算用数字を用いたアラビア数字と、バー(棒)で時刻を示したシンプルなデザインのバーインデックス、ローマン数字で時刻を見るローマ数字文字盤となります。
時計はもともとイギリスが発祥の地となっており、イギリスで古くから使われていたのがローマ数字なので、アンティークなど古くからある時計を見ると、ほとんどローマン数字の文字盤になります。
このローマン数字、アラビア数字と比べてみると概念が全然違います。
まず、0が存在しないのです。
1はⅠなのですが、0が存在しないので、10と書く場合はXと書きます。じゃあ11はどう書くかというと、XIと書きます。これはつまり、X+I(10+1)という事になります。
では9はどう書くのかというと、IXと書きます。つまりIが左側にあるので、10-1という意味になるのです。
少し時計からは話が外れますが、ローマン数字は4000以上の数字が存在しないのも特徴です。ちなみに、数字が存在する3999をローマン数字で表現してみるとこうなります。
3999=MMMCMXCIX
この状態を見ると、アラビア数字が普及した現代の日本人で良かったと思ってしまいます。アラビア数字で表現するほうが、文字数も少なく簡単に思えるからです。
1000がMで3000はMMMとなります。100はCなので、900と表現する場合CMとなるのです。10、100、1000などのアルファベットさえ覚えていれば、ローマン数字は何とか解読することができそうです。
ここで、ローマン数字ならではの不思議があります。
4については、ローマンでは2種類存在するのです。5がVでV-I(5-1)なのでIVと表示するのですが、時計の文字盤にある数字を確認してみると、IIIIと表示されている事が多いのです。
理由としては、6がVIなので紛らわしいからIIIIになったとも言われています。
また、懐中時計がまだ存在していないとされる頃の14世紀、当時のフランス国王シャルル5世がドイツの時計師ヘンリー・ド・ヴィックに時計塔の製作を依頼した際、完成した時計の文字盤のIVを見て、自身の称号であるVからIを引くのは縁起が悪いと、IIIIに作り替えさせたという逸話が残されているのです。
当店にて販売している懐中時計では、ほとんどがIIIIのローマン数字を使っているのですが、よく見ているとたまにIVを使っている場合があります。
バイヤー:合田圭四郎

正美堂時計店 ウォッチバイヤー兼時計修理三級技能士 合田圭四郎
主な専門分野
腕時計や懐中時計の仕入れ、販売、オリジナルウォッチのデザインや組み立て。スイスで開催されていた世界の見本市バーゼルワールドや香港ウォッチフェアーなど国内外の展示会への参加。秋葉原にて毎年懐中時計の展示会を開催
時計知識を深めお客様に時計の魅力をお伝えするため、2009年より毎週日曜日YouTubeにて時計に関する勉強会動画を配信。
背景
1979年、高知県高知市の老舗呉服屋の四男として誕生。時計好きが高じて2006年より正美堂時計店に入社。フライトジャケットやジーンズなどアメカジ、バイクをこよなく愛する。あらゆるお客様の環境を理解するため、腕時計は常に左右両方に着用。2019年、正美堂時計店創業50周年の節目の年に正美堂オリジナルウォッチを開発。
●正美堂時計店●
✔︎毎週、時計についての勉強会動画も配信中!
✔︎ラジオ配信始めました!
いつローマン数字の文字盤からアラビア数字へ変化したのですか?
いつアラビア数字の文字盤が出現したのか?
コメントありがとうございます。
「0」は西暦867年にインドで記録が残っており、そこからヨーロッパへ伝わったと言われています。17世紀にはすでに浸透していたようなので、このあたりの時代にはすでに使用されていたと思われます。ローマン数字は今もヨーロッパで使用されていることから、変化というよりは共存しているようですね。数字が大きくなるほどゼロの概念がないローマン数字は書く文字数が多かったので、ハイブリットな使い方をされていたのでは?と考えられます。興味深いご質問まことにありがとうございます。