
時計業界の2010年問題で、スウォッチ・グループのメンバーであるETA社ムーブメントの供給停止が発表されて3年。
極端に供給停止した様子はないものの、供給をストップされたと思えるブランドはいくつか目にしました。
あくまでも個人的な意見ですが、もともとは供給された各ブランドが、それぞれの技術を用いてムーブメントを加工し、独自のものに仕上げていたら供給が停止することはなかったんではないか?と考えています。
ムーブメントを何も加工せず、下手をすれば何の装飾も加えず仕入れたまま時計を仕上げているブランドは個性などあるわけもなく、どちらかといえばコピー品と同じような品質に思えて仕方ありません。
少なからず、時計店から見ても品質が高いと思えるブランドは、無加工のままETA社ムーブメントを使う、という事はないように思えます。
2010年問題は突然起こったわけではなく、以前からアナウンスされていたわけですが、ある程度力のあるブランドはオリジナルムーブメントの開発に取り組みました。
ムーブメントで時計を選ぶ場合、完全に独自で開発するブランドと、外からの技術を援助してもらうケースなどがあります。
どちらがいいかとは言い切れませんが、前者を選ぶ場合は、注目したいのはそのブランドの歴史です。
ブランド自体の歴史は長いが、実は時計とは畑違いで成果を出し、時計業界に参入してきたブランドの場合、いくら多額の設備投資をして本格的なオリジナルムーブメントを開発したとしても、実績がわからないので10年後、20年後どうなっているかが不安になります。
オリジナルムーブメントを選ぶ以上、ある程度の価格帯であることは覚悟しなければなりません。購入する場合、過去にオリジナルを開発した歴史があるブランドであれば、過去の実績もあるので信頼出来る理由が増えます。
特別な技術を使っていればいるほど、購入から数年後に控えているメンテナンスに大きく関わってきます。時計ブランドとしての歴史が浅い場合、こういったアフターの部分で浅はかな対応で振り回される場合があります。
外部からムーブメントを供給してもらっているブランドの場合、汎用性が高いものを使っているところほど、最悪ブランドの力が低迷しても、外部のブランドなどで何とかなる場合があります。
ムーブメントは、オリジナルが高価なイメージが強く、雑誌などでも注目されやすいです。オリジナル、という部分だけを意識していると魅力があるように思えてきますが、その分語られないアフターケアなどのリスクもあり、正直迷わず購入する事はおすすめしません。
歴史、実績のあるブランドはあまり深く考えなくても、過去の実績があるので心配ありませんが、誕生したばかりのブランド、新しく時計のジャンルに参入したブランドなどの場合は、オリジナルムーブメントは発売開始から、一度オーバーホールするぐらい年数を開けて購入するのが望ましいかもしれません。
バイヤー:合田圭四郎

正美堂時計店 ウォッチバイヤー兼時計修理三級技能士 合田圭四郎
主な専門分野
腕時計や懐中時計の仕入れ、販売、オリジナルウォッチのデザインや組み立て。スイスで開催されていた世界の見本市バーゼルワールドや香港ウォッチフェアーなど国内外の展示会への参加。秋葉原にて毎年懐中時計の展示会を開催
時計知識を深めお客様に時計の魅力をお伝えするため、2009年より毎週日曜日YouTubeにて時計に関する勉強会動画を配信。
背景
1979年、高知県高知市の老舗呉服屋の四男として誕生。時計好きが高じて2006年より正美堂時計店に入社。フライトジャケットやジーンズなどアメカジ、バイクをこよなく愛する。あらゆるお客様の環境を理解するため、腕時計は常に左右両方に着用。2019年、正美堂時計店創業50周年の節目の年に正美堂オリジナルウォッチを開発。
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